日々是好日
お久しぶりです。長い間ブログを休んでしまい、ごめんなさい。
母が路上で倒れて肩を骨折したり、自分の引っ越しの準備に追われるなどで、ご無沙汰してしまいました。
今日は、やっと春めいてきたこの時期、ふっと思い出したことを書いてみます。
<昔の仕事仲間は、戦友の如し>
忙しいといったところで、若い時に比べれば今はずいぶん自分の時間ももてるようになったと思います。
子育てとフルタイムの仕事、半分寝たきりの姑の看護など・・若い頃の自分はいったい何を食べ、いつ寝たのかも記憶にありません。その頃は子供や老人用の使い捨てオムツもなく、ひたすら洗濯して、ひたすら冷蔵庫に首をつっこみ、寝たとたん朝の会社にたどりつく夢をみていたように思います。
でもやりたい仕事があったので、毎日にハリがあり、余分なことを考えるヒマもなかったことが、その日その日をすごしていくことに幸いしたのかもわかりません。仕事が終わった後、スーパーで晩のおかずを何にしていいか頭が切り換えれず、同じ売り場をウロウロしていた頃が懐かしく思い出されます。
デザイン会社でしたので、個人の仕事は最後まで自分で完結させるのですが、子供が小さい内は残業もあまりできなくて、子供を連れてよく休日出勤をしたものです。やはり同じような状況の同僚がいて、彼女の子供と息子が仲良く遊んでいてくれるうちに、必死に仕事をしていました。このころの同僚とは、まるで戦友のような感じで、今もときおり連絡をとりあっています。お互いに猛然と人生と戦っている想いでした。
<深い沼の目の見えないカメの話>
お互いに伴侶に憤懣やるかたない思いがあったのですが、彼女のほうは無事に危機をのりこえ、現在は円満な家庭内別居に成功し、本来やりたかった油絵の世界にたどりついたようです。今では一年に三カ月は単身バリ島に滞在して作品を仕上げ、毎年個展を開いています。
昔、忙しい時に、私たちはいつか一緒にバリ島に旅したいと言い合っていたのですが、今だに私は仕事以外で海外に行く余裕もなくうらやましいかぎりです。その彼女から、先日手紙が届きました。
バリ島は独特の宗教観のあるところで、ほとんどの人がいまでも毎日祈りを欠かさず、日々の宗教行事を守っておられます。そのバリ島の昔からの言い伝えに、目の見えない沼のカメの話があるそうです。
ジャングルの鬱蒼とした木々の中、とても深い深い沼があり、水はどんよりと濁り、ただでさえ陽の光が差し込まないような沼の中に、時間もわからないくらい途方もない昔から、目の見えないカメが棲みついていたそうです。ほとんど暗闇のなかでだけ生きてきたそのカメが、一生で一度でもいいから太陽の光というものを感じたくて、だだただその一途な気持ちだけで、沼の中を上へ上へと浮上していくという話です。
ただでさえ沼には落ち葉や枯れ木、ゴツゴツした岩が積み重なり、手足はズブズブと重い泥にはまりこんで身動きさえ取れない状況です。暗いだけでなくもともと目が見えないのですから方向感覚さえつかめません。進んでいる方向が正しいかどうかさえ確証がないのです。
それでもカメは太陽の光というものがどんなものかを知りたくて、動き回るのです。その間の時間がどれほどなのか、永遠といえるほど途方もなく長いものだったに違いありません。そして無我夢中に動き続けるうち、やっとポッと明るいものを感じた時、カメは水面近くに浮上できたということです。
<人間として生まれてくるということ>
この後どうなるかというと、水から首を出すことができたカメはそこに光を見ることができたのです。長い間生きてきてもカメは光を知らなかったし光を見たいとも思わなかった。それに目が見えなかったのではなく、あまりに深い沼にジッとすくんでいたために、目自体が見えなくなっていたのだということに気がつくのです。バリ島の言い伝えをわざわざ手紙に書いてきてくれた友達は、こう結んでいます。
「これは、人間としてこの世に生をうけることがいかに奇跡のようなものかを、小さな子供に教えるための
逸話らしいのよ。私たち色々愚痴をこぼしてきたけれど、ここにこうして生きていること、人間に生まれてきたことの本当の得難さ、有難みが少しもわかっていなかったような気がするわね。」と。
彼女らしいなと思うと同時に、誰かに頬をバシッと叩かれたような衝撃を受けました。深い沼の中の目の見えないカメは自分のことだと思ったからです。
今年の春は、行きつ戻りつでなかなか本調子に進んでいません。お客様のなかでも、体の不調を訴えて来られる方も多く、地球の変革期に入ったなという感じはぬぐえません。ただ、いかなる時代に生まれ、いかなる
状況に出会おうと、たった一度きりの自分の人生にかわりはありません。
日々是好日・・・アッという間に過ぎ去っていく一瞬ごとに限りない愛着を抱けるように、今の自分を愛して受け止めてやれるように、そんな想いがつのりました。
長い文章をお読みくださり、有難うございます。
もう少し、ほんのもう少しで本当に春がやってきます。やさしさに満ちたかぐわしい季節です。
どうぞお体を大切になさって、この季節を十分に楽しくすごされますように。
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